第2章
つるバラの品種選び・入門編



幼い苗からこの姿を想像できれば

つるバラは、基本さえわかれば、けっして難しい植物ではありません。

ただし、最初の品種選びが大切。

貴方の庭にピッタリの仕立て方にむいているつるバラがきっとあります。
その選び方をマスターしてください。

それさえできれば、夢見るようなつるバラの庭を作ることができます。





つるバラの品種選びの手順

つるバラを楽しむ原点は、枝の扱い方、品種の選び方だということがわかると、
次には実際の品種選定の手順について考えなければならないでしょう。
私の場合を参考にお話しましょう



@ 咲かせたい場所に対して、つるバラの枝の伸び方が合うかどうかをみます。

具体的には、場所に対しての枝の感じを確かめます。枝の太さや伸びる長さ、伸びる方向やしなやかさなどで品種のしぼりこみをします。自分がその場所に思い描いている景色に対し、枝の表現力が合っているかどうかがポイントです。

枝の感じというのは似たタイプが多いので、たとえば「この場所には、上に上がる枝で、太くなりすぎず、伸びは枝先まで5メートルくらいのものがちょうどいいかな…」と考えます。


つるバラは場所に合わせて



道行く人にどう見えるかも考慮して

Aつぎに花の咲く感じと葉の茂る量を考えます。

「花の咲く感じはうつむきかげんで下から見ても良く、ちょっと大きめの白…」などと思いをめぐらせ、この条件にあった品種を検索してゆきます。この条件に合う品種で即座に浮かぶのがつるアイスバーグとつるサマースノーです。

両者の特異点を考えると、刺の多少や枝から受ける印象が違います。葉の量や色の濃淡などでも受ける印象に差が出てきます。似た品種でも描く世界は大きく異なります。それぞれから感じられる印象から自らの絵心が刺激され、誘引などの作業に発展し、風景を作り出していくというのがつるバラの面白さであり、その原点が品種選定なのです。

植えつけるつるバラの品種によって、先の風景に大きな差が出てきますので、軽々につるバラを選ばずにじっくりと考えてください。じっさいに仕立てられ、咲いている姿を見て歩くのもいい勉強になるでしょう。また、バラ苗の専門店はそうしたときに心強い味方です。植える場所と描きたい風景を説明して、品種についてのアドバイスを受けると良いと思います。そのために専門店があり、専門家がいるのですから。

そして、バラ苗の選定は、苗の良し悪しで判断しないでください。庭園の世界で苗の良し悪しでつるバラを植え付けてしまうと、それで世界が止まるかもしれません。苗は大きさや価格で判断して購入するものではなく、数年後の成長した姿を想像して品種を決め、苗を求めてください。

場所や環境に配慮してつるバラの品種選定をしてゆけば、あなたとつるバラとの間には、付き合いやすい親友のような関係が保てるはずです。





つるバラの品種選びをするうえで
押えておきたい3つのタイプ
これを知っていれば、大きくまちがえることはない




上に向かって伸びていくタイプのつるバラ
【クライミングローズ】


上に伸びる枝の方向や太さは、品種によりさまざま
つるバラを根元から伸びるシュートの方向や長さでタイプ分けをした場合、もっとも品種数の多いのが上に向かって伸びてゆくタイプです。主に一季咲きの品種が多く、つるバラの主流をなすといっても過言でないほどポピュラーな品種です。

クライミングローズはシュートを空中に伸ばし、風に揺られながら、頼るべき何かを探します。樹木など固いものに当たったら、枝にある刺を道具として自分の枝を固定し、さらに上に向かって伸びてゆきます。樹木などの上まで伸びた枝は、樹木の上を覆うように横に広がって日照を確保し、十分に日光を浴びて花を咲かせます。また、花後に多くのシュートを出し、さらに成長を続けます。

クライミングローズの枝の伸び方は、品種によっていくつかの特徴的なクセがあります。そしてその性質を最大限に利用すると、無理がなく仕立てができて、豊かなつるバラ・ライフを楽しむことができるのです。

大まかに上に向かって伸びる性質といっても、株元から直立に枝を伸ばすつるバラと斜め上に枝を伸ばすつるバラでは、植えつける場所によって使い分けが必要です。





水平に枝を伸ばすタイプのつるバラ
【ランブラーローズ】


数は多くないのですが、水平に枝を伸ばす品種がつるバラにはあります。ランブラーローズと呼ばれる品種群で、この品種のルーツは野山に自生している照葉(てりは)ノイバラです。

照葉ノイバラの新しく伸びる枝は、地面を這うように伸び、居心地のよい場所で地面に根を張り、またそこから新しい枝を伸ばして進んでゆく、移動する植物の性質を持ったつるバラです。

20世紀初頭から品種改良が進み、多くの名花が世に送り出されています。近年はグランドカバー用の品種にこの性質が活用され、耐病性に優れた品種が発表されるようになりました。

ランブラーローズの特徴は、枝が細く、伸びる長さは5メートルから10メートルくらいで、一季咲きの品種が多く、花の大きさは小輪〜中輪の美しい品種が多いことです。

最大の特徴は枝の伸び方で、ほかのつるバラと違い、上に伸びずに水平または下垂して伸びます。この性質は、ウィーピングスタンダードに特徴的な姿となって生かされています。

ランブラーローズは細かく分けるとさらに、比較的上方向に伸びるもの、斜めに伸びるもの、匍匐(地面を這う)するものの3つに分けられますが、詳しい解説はこの後の章に譲ります。

ランブラーローズを壁面に誘引して





コンパクトな半つる性のつるバラ
【シュラブローズ】


シュラブローズと針葉樹、草花で構成したウォールガーデン
つるバラの品種でもっともコンパクトなのがシュラブローズで、「半つるバラ」とも呼ばれます。品種数も多く、咲く花の大きさ、色、花期など、バラエティーに富んでいるのが特徴です。オールドローズもこのタイプに入る品種が多くあります。イングリッシュローズも本来シュラブローズに分類され、半つるバラが多いのです。

庭の中では人の目の高さ近くで花を咲かせる仕立て方をすることが多く、特に窓の周辺には効果的です。枝の伸びる長さから植える場所決めて、枝を誘引して花の美しさを十分に引き出すように演出したいものです。

オールドローズには葉の美しい品種や刺の特徴的な品種が多いので、枝数や枝の長さを多くとって、花がたくさん咲くようにしてください。

イングリッシュローズも半つる性の品種が多く、四季咲き性を求めるよりは、春の花の咲く風景を重視した剪定・誘引を行ったほうが美しい花を得られると思います。

シュラブローズもランブラー同様、後の章で更に分類わけしていきましょう。





つるバラの品種選びをするうえで
考えておきたい3つの環境

庭の事情はさまざまです




狭い場所に向くつるバラ


ブラッシュ ランブラー

狭い場所でつるバラを楽しむには、直立に枝が伸びる品種が使いよく、通路にはみ出るように斜め上に枝を伸ばす品種は適切とはいいがたいでしょう。

たとえば、ブラッシュランブラーは前者でニュードーンは後者になります。つまり、ニュードーンのほうが広い植え場所を必要とする品種と言うことになります。

つるバラはその品種の個性に従って新しい枝を伸ばします。人為的に手入れをしても、つるバラが本来持ち合わせている性質を変えることはできません。同じように見えても、枝の性質は品種によって微妙に違いがありますので、十分に調べておくことが大事です。





《日当たりのよくない場所に向くつるバラ》



日当たりのあまり得られない庭だったら、一季咲きの上に伸びるタイプのつるバラを植えましょう。日照の条件が悪く四季咲きのバラを植えてもうまくいかない場合は、伸びる力の強い品種を使うことです。

薄明かりの中でも光を求めて上向きにたくましく枝を伸ばす性質を生かせば、たとえ日陰であってもバラの花を楽しむことが可能です。

この場合、植え付けた株元には良好な日当たりは得られません。しかし上に伸びた枝で十分に日光を浴びることができれば、順調に成長を続けることができます。このタイプのつるバラは、少々の日陰は苦もなく成長します。まったくの日陰では成長は望めませんが、そのような条件下でも、ガラス窓からの反射光があれば、ある程度の明るさが得られますので、枝は反射光に向かって伸びてゆきます。花つきなど多くを望まなければ、それはそれで美しい花を鑑賞できるでしょう。

長く枝を伸ばすタイプのつるバラの優れた性質です。

ブルー マゼンタ





《しだれさせる姿で仕立てるつるバラ》


ガーデニア
庭では低く長いフェンスや大きなパーゴラ、斜面など、つるバラの枝が上に伸びて欲しくない場所があります。また、壁面の上から枝を下垂させた姿で仕立てたい場合もあります。

横に長く花を咲かせたり、高いところから下垂させて花を咲かせる仕立て方に優れた適性を見せる品種として"アルベリック・バルビエ"や"ガーデニア"、"ドロシー・パーキンス"、"フランソワーズ・ジュランビル"などがあります。どれも古くから愛されている品種で、いずれ劣らぬ名花ぞろいです。
家の壁面や窓の周辺にも使え、しなやかな枝が独特の風景を作り出します。







前ページ 目次 次ページ